宮城県作業療法士会

お知らせ

県士会ニュース135号 2015.5.23

2015.05.23

目次

① 平成27年度介護報酬改定からみるリハビリテーションのあり方 … 三浦晃
② 認知症初期集中支援チームについて … 小野咲子
③ 研修会参加:第3回岩沼・仙南ブロック研修会に参加して … 菅原理美
④ 職場紹介:まーぶる株式会社 … 佐藤明子
⑤ イクメンより:子供が作業療法士としての私にもたらしてくれたもの … 山田孝弘
⑥ つぶやきコーナー:ポンコツ … 荒井豊

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① 平成27年度介護報酬改定からみるリハビリテーションのあり方

 

介護老人保健施設せんだんの丘 三浦晃

昨今、そして今後行われる医療・介護の改定は、一様に地域包括ケアシステムの構築に集約されるような方向性を持っている。これを背景に、平成27年度の介護報酬の改定は、「①中重度者や認知症高齢者への対応強化」「②介護人材確保対策の推進」「③サービス評価の適正化と提供体制の効率化」という3つの基本方針が打ち出された。①の中に、「活動と参加に焦点を当てたリハビリテーションの重視」という項目が掲げられたことは周知のことと思う。これを受けて、“本来のリハビリテーションの再構築”“リハビリテーションの原点回帰”といった言葉を見聞きするが、これは、長い間、身体機能面への働きかけに偏重してきたリハビリテーションへのテコ入れと受け取ってもよいだろう。しかも、このテコ入れは、まずは川下から開始し、やがて川上へ、…つまり介護領域から医療領域への展開が示唆されており、今は序章の段階といえる。よって、医療領域にいるセラピストも今改定の内容を十分に理解し、川下への流し方(託し方)を意識した支援を実践する必要があるだろう。では何を意識するのか?そのキーワードが「多様性のある“人生”や“暮らし方”の再建」であるからこそ、“活動”と“参加”が強調されている。勿論のこと、各領域によって力点を置く側面に違いはあるが、「一人ひとりの人生や暮らし方の再建に資するシームレスな支援」というスローガンをもった連携が不可欠となる。

さて、今改定におけるリハビリテーション関連の加算は、前述のとおり、活動と参加に焦点が当てられた設定となっている。詳しい要件は解釈通知をご参照いただくとして、ここでは、通所リハ・訪問リハにおける「リハビリテーションマネジメント加算」「生活行為向上リハビリテーション実施加算」「社会参加支援加算」の3つを関連づけながら、これらに示されている支援の方向性と実践すべき支援内容について概説してみたい。

従来のPDCA サイクルの頭に、「S:サーベイ(初回調査)」を加えたSPDCAサイクルにより、利用前の段階で、一人ひとりの人生や暮らし方の再建に関わるニーズを引き出す。これと並行して、心身機能・活動と参加・環境面の各側面とその関連性をアセスメントし、再建に繋がるような合意目標を設定する。そして、その目標達成までの具体的なプロセス・具体的な手段・具体的な役割分担をプラン化し、本人を主人公に据えて、多職種や関連事業所は勿論、家族をはじめ地域に存在するインフォーマルな資源を効果的に絡めながらチーム支援を実践していく。やがて、目標達成が間近となったり達成した場合には、自宅での自主的な習慣や役割、介護予防・日常生活総合支援事業、地域のカルチャー教室や集いの場、もしくは、デイサービスといった、参加に資する資源への橋渡しを支援する。こうした一連の支援をきちんと行い、自立度の向上の延長線上にリハビリテーションサービスからの卒業を目指し、成果に結びついた場合に、手厚いインセンティブがつく仕組みとなっている。

このように、“本来のリハビリテーションの再構築”“リハビリテーションの原点回帰”の序章として、その仕組みと舞台が用意された。いずれの事業所も今は試行錯誤の船出であろう。まずは、今改定が放つメッセージを私たち一人ひとりが受け取ることを前提とし、活動と参加に焦点を当てたリハビリテーションの形を地域一体となって創り上げていく必要がある。

「OT風が吹いている」…今改定を受けて、OTのみならず他職種からも耳にする言葉である。この風を感じ、そして乗るために、私が所属する県士会企画調整局地域支援班としても、ここに貢献できるような企画を準備中である。
最後まで読んでいただいた士会員様へ、「一緒に頑張りましょう!!!」

 

② 認知症初期集中支援チームについて

 

介護老人保健施設せんだんの丘 小野咲子

H24年6月に「今後の認知症施策の方向性について」厚生労働省認知症施策検討が始まり、「事後的な対応」から「早期・事前的対応」への方向性が重視され、「早期診断・早期対応」をする為の「初期集中支援チーム」がまとめられた(オレンジプランをご参照ください)。そしてH25年度には全国14カ所で国のモデル事業が展開され、そのうちの1つが宮城県仙台市の本庁に設置されたチームである。仙台市健康福祉局保険高齢部の介護予防推進室が事務局で、医師・保健師・介護福祉士・作業療法士の専門職が仙台市から委嘱を受け活動を開始。H25年度、このモデル事業に関わっている全国の作業療法士は19名である。

H25年度の仙台市の方針としては地域包括支援センター(以下、包括)をサポートする体制構築を目的の1つに挙げており、仙台市49包括の内、協力包括は3包括(国見・小松島・向陽台)であった。事例としては、妄想性障害を含めた、困難事例が大半を占め、鑑別診断の必要性の有無や、現在介護保険サービスを利用しているがそのサービスが適しているか。などケースカンファレンスに近い状態であり、初期集中支援とは言い難くチーム員としても悩みの多い1年であった。

2年目のH26年度は同じメンバー+薬剤師会、区の障害高齢課のメンバーも加わり、3包括も各専門職に対して、どの視点で評価して欲しいかを具体的に示すことが多くなり、訪問しやすくなった。評価の視点としては、生活実態の把握や家事能力などに対する遂行機能の評価、どの程度動けるかの身体機能評価や認知症分類の見立てが中心であった。平均的には月1~2回の訪問で多い月で4回の時もあった。

仙台市は市全域展開を見込んでいる為、3年目のH27年度は青葉区・宮城野区・泉区の3区圏域32地域包括支援センターに拡大をする。一気に包括の数が10倍になる為、相談・訪問件数がどの程度増加するか予測できない状態である。老健トラストの高橋OTも仙台市から委嘱を受けOTが2名体制になり、いずみの杜診療所もチームに加わり、今年度は2チームで対応することになる。

まだ発展途上の「認知症初期集中支援」である。宮城県士会の地域支援班でもこの認知症に対応すべき研修会を企画する予定である。関心のある方は是非参加をしていただきたい。そして、一緒にOTの強みをアピールしていきましょう!!

 

③ ◆研修会参加◆ 第三回 岩沼・仙南ブロック研修会に参加して

 

介護老人保健施設リハビリパークさくら 菅原理美

去る1月30日、柴田町船迫生涯学習センターで岩沼・仙南ブロック研修会が開催されました。テーマは「終末期の作業療法」について、松田病院の大貫操先生を講師にお招きしてお話を聞かせていただきました。私は今回の研修会に企画の段階から参加させていただいたのですが、予定での参加人数は30名以上と老年期分野以外からも申し込みが多くテーマに対する皆さんの関心の高さがうかがえました。ところが当日の天候はあいにくの大雪で欠席者も多く、開催も危ぶまれるほどでしたが開始時間を遅らせてなんとか開催することができました。

老健で最期をむかえる利用者様や、いつかはやってくる大切な人の最期など「死」が近づいている方やその周囲の方々とどのように接していけばいいのか。身内を見送る機会もまだ少ない私にとって今回の研修は「死」を考えるとともに人とのかかわり方についても考える機会となりました。研修の中ではじめて聞いた「スピリチュアル・ペイン」や「スピリチュアル・ケア」という言葉。正直なところ、スピリチュアルと聞いてもぼんやりとしたイメージしか浮かんできませんでしたが、思っている希望と現実との開きがあると苦痛を感じ、その人が苦しんでいるポイントがどこにあるのかをアセスメントして援助することが大切なのだと学びました。

対象者とともに悲しみや苦痛と向き合い、力になろう、理解しようとする思いは終末期の方だけでなく私たちが関わるすべての人に当てはめられるのではないかと思います。仕事で関わる利用者様はもちろん夫や家族、友人と話をしているときでも、どう話を聴くのか。「話を聴く」ということの大切さや難しさを感じ、仕事の場面では寄り添う姿勢とあわせて専門的な視点を持つことができるように、多くの対象者の方に理解者と思っていただけるような聴き方ができるOTになれればと思いました。

今回は悪天候の影響もあり時間を短縮しての研修となってしまいましたが、ほんとうに有意義で充実した内容だったのでもっとじっくりとお話を聴けなかったことがとても残念でもったいなかったです。もし機会があれば、他施設の方とも意見交換ができればと思いました。

 

④ ◆職場紹介◆ まーぶる株式会社

 

佐藤明子

【会社紹介】
平成26年3月に個人事業主として(まーぶる)を起業。同年7月にまーぶる株式会社となりました。
創業当初は、施設支援事業・講座開催・VOCAなどのコミュニケーション機器販売・住宅改修工事・車いすメンテナンス等を行っておりましたが、小児に特化した支援事業を行いたく、平成27年2月2日 仙台市宮城野区田子に児童福祉法に基づく児童発達支援事業・放課後等デイサービス・保育所等訪問事業を行う「多機能型支援事業所 まーぶる・びーと」を開所いたしました。

・定員数
1日最大10名(児童発達支援5名 放課後等デイサービス5名 保育所等訪問支援随時
・対象年齢
0歳~20歳まで
・サービス提供時間
10:00~19:00
・営業日
月曜から金曜日
・サービス提供地域
仙台市内(宮城野区・泉区・青葉区・太白区・若林区)その他地域
・スタッフ数
児童発達支援管理責任者兼OT1名 OT1名 指導員2名 合計4名
(平成27年7月より、OT1名 追加採用予定)
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【主なサービス提供内容】
・児童発達支援
0~6才までの未就学の時期は、発達の土台を作る時期です。体を動かすことで、自分を知り、他人を知り、社会を学びます。弊社では、様々な遊びの中から自分の体を知り、自分の体をコントロールできるようになるためのアプローチを行っています。

・放課後等デイサービス
小学校等に上がると、多くのスキルが求められます。弊社では、1人1人のお子さまの困り感に寄り添い、できる方法を本人、保護者の方と一緒に取り組んでいきます。いままでの一般的な常識に縛られず、「その子に合う方法」を見つけます。そのため、様々な機器・課題を取り入れた活動が中心になります。

・保育所等訪問支援(仙台市内初の事業認可)
障がいのあるお子さまが集団生活を営む施設等を訪問し、当該施設における障がいのあるお子さま以外のお子さまとの集団生活への適応のため、専門的な支援をおこないます。

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【対象年齢及び疾患等】
対象年齢は、0~20歳までとなり、受給者証をお持ちで児童福祉法に基づくサービスを利用できる方となります。

【まーぶるの想い】
お子さまの発達に必要な時期に①個別のアプローチ②集団でのアプローチを併用することで、お子さまの発達の可能性を広げます。主に病院でしか会うことのできなかった専門職と関わることで、お子さまの成長の早い時期に専門的支援・継続的支援を受けることが可能になり、生活に密着した困り感を親御様と地域の支援者様と一緒に検討・実行していきます。発達に課題をもつお子さまは、「地域」での「生活」を視野に「自立や社会参加」に向けた長期にわたる支援が必要です。日々成長しているお子さまを間近にして今何ができるのか。それには【早期発見】・【早期療育】・【生活地域により多くの支援があること】が何より必要だと私たちは考えています。是非、まーぶるに遊びに来て下さい。子ども達の世界を一緒に体験しませんか?

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〒983-0021 仙台市宮城野区田子字新入10-1 JKビル21 302号
ホームページ http://www.marble555.jp
メールアドレス marblebeat555@yahoo.co.jp
携帯 070-5327-3989 FAX 022-365-5776

 

⑤ ◆イクメンより◆

子供が作業療法士としての私にもたらしてくれたもの

西仙台病院 山田孝弘

県士会ニュースをご覧の皆さん、はじめまして。西仙台病院に勤務している山田と申します。今年でOT15年目になります。子供は娘が1人、現在10歳になります。今回は育児を通して得た体験を基に、この原稿を書かせて頂きたいと思います。

私は小さな個人産院にて出産に立ち会ったのですが、へその緒が首に巻きついた状態で娘が産まれたため、出産後すぐに泣かず、「手伝って下さい、医療職でしょ!」と看護師さんに半ば強引に手伝わされ、スタッフのように動きながら立ち会うという、破天荒なスタートから育児が始まりました。反射が授業で習った通りに出現・消失することに感激し、国家試験対策にて勉強した発達段階の通りに日々成長することに更に感動し(これって、「OTあるある」ですよね?)、はや10年。

娘の成長は、実に多くのものを私にもたらしてくれました。甘いものなんか殆ど食べなかった私が、娘と一緒に甘いものを食べていたら、いつのまにか苦手を克服してしまったこと。今まで全く興味なかったのに、娘と一緒に色々観ていたら、今更ながら、某「夢の国」にけっこうはまっていること等もありますが、何よりもOTとしての私に確実に影響を与えてくれました。

娘が保育園や幼稚園、小学校にて作って持ち帰ってきた作品を見て、何度職場で行う手工芸のヒントを得たか…。娘との「お父さん、今日こんな遊びをしたんだよ」という何気ない一言から、何度閃いて職場で新しいレクを行ったか…。そして娘が怪我をしたり、体調を崩したりした際に、仕事での経験を基に身体を診たり話を聴いたりしたことで、その後何度感謝されたか…。そしてその後、「OTをしていて良かった」と何度自分を顧みることが出来たか…。数えきれない程です。娘と、そしてその娘を産んで、一緒に育児をしてくれる妻に感謝です。

その甲斐もあってか、現在、娘は手芸でぬいぐるみの服を作ることが趣味という実に将来のOTらしい一面を発揮してくれています。

OTの皆さん、機会があったら、是非育児を体験してみて下さい。育児は間違いなくOTとしてのあなたの幅を広げてくれますよ。

 

⑥ ◆つぶやきコーナー◆ ポンコツ

 

青葉病院 荒井豊

1年が過ぎるのは年々早くなっており、自分の年齢さえも数えられなくなってきている今日この頃、幼子2人に振り回され、運動会でも親子リレーに出ようものなら自分のイメージと足の動きがまるで合わず、一歩間違えればすぐにでも転げてしまいそうなことも度々・・・。キモチは若いつもりでいても確実に老化は進んでいることを思い知らされる出来事が増えてきている。40歳半ばを超えた頃から自動血圧計での値が変わりはじめ、「機械だと高いんだよね」などと理由付けをしていたがそれも2~3年も続くとごまかせなくなり、薬の服用が決定。これがケチの付き始めでその後は、十二指腸ポリープ、総胆管結石、TFCC損傷、内痔核、乾癬、大腸ポリープ、おまけに涙もろくもなり・・・。毎年増え続ける病気と通院地獄に「だいぶポンコツになってきたんだなぁ」としみじみ。

ポンコツはポンコツなりにちゃんと整備すればまだまだ大丈夫と一念発起し、ジムにでも通って体を作り直すぞ~。なんて面倒くさがりの私にはできる訳もない。そうか。病気になるということは体力の衰えはもちろんだが、気力が出てこない、つまりストレスを発散できていないことが原因だな(かなり無理矢理)という訳で、自分の趣味をもう一度考えてみることにした。
若い頃は1年365日のうち330日くらいパチンコに明け暮れていたが、子供が生まれてからは誕生日プレゼントということで1日やらせてもらえる程度になったし、テニスやゴルフも簡単には出来ない。健全に屋外できれいな空気をいっぱい吸って楽しく遊べて子供も喜ぶことということで閃いたのは、「東北楽天ゴールデンイーグルス」だった。

爺婆も巻き込んで、まずは形からとユニフォームから帽子、マフラーなどグッズを身にまとい、外野レフトの自由席に陣取りメガホンを叩いて1本ヒットが出る度に選手の名前を叫び、1点入る度に周りの応援団と一緒にハイタッチをしたりバンザイを繰り返し、枯れたのどを生ビールで潤す。日頃のストレスもどこへやら、すっかり虜になってしまった。

そしてあの、2013.11.3。「あとひとつ」の大合唱。マー君の渾身の投球、雄叫び。東北にとって大きな悲しみに包まれた「3.11」を乗り越えて、その逆の「11.3」とても大きな喜びに包まれたその瞬間に立ち会えたことは、自分にとってこの上ないご褒美をもらったような感動だった。

野球を知っている人も知らない人も全く関係なく、ディズニーランドのように計画を立てて行くようなこともなく、気軽に行ける「現実逃避の場所」。

一度、球場に足を運んでみてはいかがかな。

編集後記
新年度になって早数ヶ月が経ちました。わたしは今年度から5年目に突入しました。昨年度は初めて学生指導をさせてもらったりといろんな経験が増え、もうそんな年数なんだと改めて実感しました。5年目…がんばります! 佐藤

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